( 訪問・撮影日 : 2008. 7.18 )

あがりこ大王

秋田県にかほ市象潟町、鳥海山の北西山麓にある中島台レクレーションの森・獅子ケ鼻湿原を訪ねた。　 ここには2〜3時間ほどで回れる素敵なトレッキングコースが拓かれていて、世界的にも珍しい「鳥海マリモ」を見ることができます。 そしてブナの原生林では、お目当ての「あがりこ」と呼ばれる独特な樹形をしたブナの巨木を眼にすることができる。 その昔、この森では炭焼き用に使うブナを伐採する時、ブナの根株を殺さないように伐っていたので、その伐口はカルス(治癒組織)を形成してコブ状に膨らんで変形した。 そして、その伐口から発芽した芽を再び成木になるまで育てて再伐採を繰り返していた。 それを長年にわたり何度も繰り返した結果、人為によってこんな樹形になってしまったようである。 そんな宿命のもとに生きてきたこの森のブナの中にあって、特別大きくて存在感たっぷりなブナが、林野庁の「森の巨人たち百選」に選ばれて注目されるようになった。

樹齢300年、樹高25m、幹周7.62mと記され、その名も「あがりこ大王」と素敵な名前が付けられたことにより一躍有名になった。 奇形ブナなどという心ない呼称で紹介されたりもしているが、このブナは人間の生活を助けるために、何度も御身を提供してくれた木なのである。 300歳にもなった今、それでもまだ自分の命を絶やすことなく、これほどまでに威厳に満ちた姿で生き続けているのだろう。 その偉大なる生命力の強さにはまこと感服するばかりである。

　獅子ケ原湿原で見れる鳥海マリモ