( 訪問・撮影日　2017/11/21 )

国道9号線・西大路五条交差点で折れて西大路通りに移り1kmほど南下すると、こんもりと道路にはみ出すような樹冠が見えてくる。 これが西大路通りを曲げた「若一神社(にゃくいちじんじゃ)」である。 歩道を迂回させて車道ぎりぎりにまではみ出して鎮座しているのは 平清盛 が手植したと伝承される楠を祀った「楠社(くすやしろ)」である。 これは昭和9年に市電の路面工事の時に撤去を敢行しようとしたが、清盛の祟りがあるといわれていた伝説のとおりに工事関係者が次々と、 事故や不幸に襲われたために、工事を断念して現在のように樹を残して道路を変則的につくった実際の話である。 このような話は各地でよく聞くが、この樹もそんな怖い木の一本なのだ。 平清盛の手植だとすれば樹齢は800年以上ということになるが、それほどの年齢のクスにしては珍しくコンパクトな樹だ。

若一神社のあるこの地は平清盛が六波羅在住の頃、ここに別邸を建て西八条御所としていた所だとされている。 1166年、紀州・熊野詣での時にお告げを受け、帰宅後に邸内の土中から熊野の若一王子の御神体を掘り出し、 社を造り鎮守して開運出世を祈ったところ1167年に太政大臣に任ぜられた。 それを感謝して手植したのが今に現存するこの楠で、いまでは若一神社の目印であり、象徴となっている。