前山寺のケヤキ

信州の鎌倉と称される塩田平を眼下に見晴らす独鈷山(とっこざん)の麓にある前山寺(ぜんさんじ)は812年に弘法大師によって開かれたと伝えられる古刹である。この寺には窓や欄干などがなく、建造途中のようでありながら、その中途半端な美しさから「未完成の完成の塔」と呼ばれる珍しい三重塔がある。そして、長い参道と本堂などをとりまく自然がすばらしいので花の寺とも呼ばれ、たくさんの参詣客でにぎわう、別所温泉界隈の観光スポットになっている。まず最初に「黒門」と呼ばれる門の前に来ると、門の後方に大きなケヤキが立っているので嬉しくなる。ここから150mほどの参道が伸びて山門に至るのであるが、その参道の両側には桜・松・欅の大木が並んでおり、その中の一本に幹周6.75mと記されている「大ケヤキ」がある。上田市は、この見事な参道全体を天然記念物に指定している。