(訪問・撮影日 2004年4月21日)

日本三大秘境の一つといわれる東祖谷は、源平の戦いに敗れた平家落人が多く隠れ住んだと伝えられる地で、 平家落人にまつわる遺跡や伝説が多く残されている。 祖谷の地に入った「平国盛」が鉾を納め、建立したとされる鉾神社の境内に、平国盛の手植えと伝えられる「鉾杉」がそびえている。 別名「国盛杉」とも呼ばれるこの樹は、樹齢８００年、樹高５０ｍ、目通り幹周１１ｍと記される徳島県最大のスギである。 大地を掴んだ根張りの逞しさ、真っ直ぐに天を貫く勢いで聳え立つ太い幹、 何十本という矢を突き立てたような枝は猛々しさを感じさせ、勇猛な武将の名に恥じない実に見事な姿である。 幼い安徳天皇を護り祖谷に隠れ住んだ平国盛は、祖谷で平家の再興を企てていたが、安徳天皇が崩御されたと共に一切を断念し、 天皇と平家一門の冥福を祈る日々を祖谷の自然の中で送ったという。この地にはそんな敗者の悲哀に満ちた話が語り伝えられている。