我流つれづれ草

2009/09/04

スギ

室生寺の天神杉

我流つれづれ草・・・身死して財残るは

死んだ後に遺品を残すのは、利口な人間のすることではない。 くだらないものを溜めこんでいると格好悪いし、自分で良い物だと思っていても、この人は、こんなものに執着していたのかなんて、 思われてしまうのも情けない。
　また、むやみに多く遺すのは、面倒のもとになるから、面白くない。
　そもそも、自分の死後に相続で争いが起こるなんてことはみっともないことだ。 だから、死んだら誰かにやろうと思って遺書を残すぐらいなら、生きているうちに譲っておくべきである。
　年老いた者の持ち物としては、朝夕の生活に必要なものだけにして、それ以外のものは何もないのが望ましい。

徒然草　原文　第140段

身死して財残る事は、智者のせざる処なり。よからぬ物蓄へ置きたるもつたなく、よき物は、心を止めけんとはかなし。 こちたく多かる、まして口惜し。「我こそ得め」など言ふ者どもありて、跡に争ひたる、様あし。後は誰にと志す物あらば、 生けらんうちにぞ譲るべき。 朝夕なくて叶はざらん物こそあらめ、その外は、何も持たでぞあらまほしき。

[この段によせて]

吾輩のように、財産のないものには相続などという心配はいらない話だが、くだらない物をためているということでは身につまされる。 部屋を見渡して、押し入れ、物置を覗いてみると、長年かけて溜めこんだ不要な物の多さにがく然とするのである。
　一時期のテレビで「ゴミ屋敷」問題が取り上げられていたが、あれほどまでに過激なゴミ収集癖は特別に異常な人だと思っていたら 今度は「ゴミマンション」・「空き家」・「遺産ゴミ屋敷」なるものが、問題を起こしている。ゴミ屋敷の数千倍の数で存在していて、 ゴミ片付け業者が結構繁盛しているという。 物品をいとも簡単に使い捨てにする文明の行きつく先には、核廃棄物を含め、いずれ「ゴミ列島」問題が出現するだろう。
　 吾輩もこんな話と一緒にされて「遺産ゴミ」云々と言われないようにしなければならない。 　我が人生はあと５年ほどはあると見積もって、この間に、我が人生でため込んだゴミの清算をぼつぼつ始めなければと思う。 清算とは、これ以上持物を増やさず、減らすことから始めるのだが、長年にわたり愛着していた物を、そうは簡単に始末できないだろう。 だから、まず近年に使ったことのない不用品から捨て始め、最終的には身辺からあらゆるものを捨て、兼好さんが言うようには無理かと思うが、 極力生活に必要なもの以外は何も持たないようにしてみようかなと思う。

クス

春日大社・若宮大クス